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無意識の頬擦り
 巴と並んで見る夢は、いつもほわほわとやわらかで暖かい。彼(あるいは彼女)の体温とは比例しない温度に身を委ねながら、サタンは心地よい眠りの深みへ懇々と沈んでいった。

 その日、巴は真夜中にも関わらずぱっちりと目を覚ました。あまりにも唐突に目が醒めたことに自分でも驚きながら、むっくりと体を起こす。そもそも巴は『闇神』とその名に冠するように闇に属するものだ。そういうことが時たまあってもおかしくはない。
 その段階でいつもと異なったのが、彼の生涯の伴侶である大男が身じろぎひとつしなかったこと。
 いつもならば巴が起き上がっただけで気配を察してぼんやりと目を開けるサタンが、今日は気持ちよさそうに規則的な寝息を立て続けている。だからといってなにか巴が特別の感慨を覚えるわけでもない。珍しいことだと思いつつも、水を飲みにベッドを降りた。
 戻ってきてもぴくりとも動かず穏やかに眠り続けているサタンを見下ろして、そのままベッドに入ろうとしていた巴はふと足をとめた。
 少し逡巡して頬を染め、起こしてしまわないようにおそるおそると視点を下げる。しゃがんで覗き込んでみても、寝息の主はやはりびくともしなかった。ころころと様々な表情を浮かべる面立ちは、こうして目を閉じていると大理石でも彫りこんだように整っている。起きているときはその生気や野性味に気圧されて大人しくしている素材としての美しさか、まつげの一本一本まで一つの芸術品のように見えた。
 きれいな顔してるなぁ。人並以上に整った自分の容姿など露ほども浮かべずに、巴はぼんやりとその寝顔に見入った。ひとしきり堪能してから元の場所へ収まると、少しだけサタンの寝息が止まる。身を堅くする巴を知ってか知らずか、伸びてきた腕が緩く巴を抱き寄せた。仰向けに眠るサタンの上に、きゃしゃな巴の体が乗りあげる形になる。巴の体重では彼の呼吸の妨げにすらならないらしく、寝息と共に上下する腹筋に引き攣れた様子はない。必要以上に心音を早めながら、寝ている相手に緊張しても仕方がない、と巴もようやく力を抜いた。
 連れ添って何年になってもサタンほどスキンシップに馴れない巴を、起きているときなら子どもっぽく笑ってからかっただろうかの人も今は大人しいもので。調子に乗ってぐりぐりと頭を撫でてやると眠るサタンの口元がやんわり綻んだ。予想外の反応に赤くなる巴を他所に、駄目押しのようにやはり起きているときより幾分控えめに手のひらに擦り寄られる。
 いよいよゆでダコの様相を呈しながらも手を引くのが躊躇われて、声も無く考えあぐねた巴がそのまま首元にしがみついて眠ることにしたのはそれからしばし後のこと。
 溜息を漏らして悩みつかれた巴がそっとサタンの肩へ腕を伸ばしながら思うのは、ただ一つ。
 「惚れた弱み」は強い。ということだった。
 翌朝目覚めた大男が、可愛らしく寝息を立てる恋人の目覚めまで動けなかったのはまた別の話として。
 自分より高い体温に身を任せながら、巴はほわほわとやわらかで暖かい夢にゆっくりと沈みこんでいった。
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【2006/03/20 00:51】 | 短編、他 | トラックバック(0) | コメント(0)
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  • Author:狩野宿
  • 虚言・妄想・戯言・被害妄想が並じゃなく多いです。
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    そんな感じの修行中字書きです。

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